「FX投資家」と「AIFX投資家」は「投資方法」も「必要なスキル」もまったく異なります。
これまでは「FX投資家」でしたが、ある時点から「AIFX投資家」になりました。
ドラスティックに変わったわけでは無く、社会情勢やAI開発環境の変化にともなって10年くらいかけて少しずつ変化していきました。
これまでの変遷を振り返りながら「FX投資家」と「AIFX投資家」に必要なスキルについて書いていきたいと思います。
将来は「AIを活用したFX投資をしてみたい!」と思われている方には「どのようなスキルを身に付ければいいのか?」のヒントになれば幸いです。
「FX投資家」に必要なスキルについて
FXを始められる方は「FX投資家」から始めることになるケースが多いと思います。
FXに関する知識は広範なため、「FX投資」に関する知識を身に付けるだけでも相応の時間が必要になります。
思いつくままに「FX」を学んだ際に身に付けたスキルを列挙してみました。
基礎知識
- 通貨ペアの仕組み
- レバレッジと証拠金の概念
- スプレッド・スワップポイントの理解
テクニカル分析力
- チャートの読み方(ローソク足・ラインチャートなど)
- インジケーター活用(例:移動平均線、MACD、RSI、ボリンジャーバンド)
- トレンド分析(トレンド・レンジ相場の見極め)
- サポートライン・レジスタンスラインの設定
ファンダメンタルズ分析力
- 経済指標の理解(雇用統計、GDP、金利、CPIなど)
- 各国の中央銀行政策(FRB、日銀など)
- 政治・地政学的リスクの理解
リスク管理スキル
- 損切り(ロスカット)の徹底
- ロット調整による資金管理(資金の〇%以上を一度に投資しないなど)
- ポジションの分散(通貨ペアの選定)
メンタルコントロール
- 投資欲の制御
- ルール通りにトレードする自制心
- 損失を受け入れる冷静さ
戦略構築力
- トレード手法の確立(デイトレ、スイング、スキャルなど)
- バックテストや検証による戦略改善
- トレード記録の活用と振り返り
プラットフォーム操作スキル
- MT4/MT5やTradingViewの使い方
- 注文方法(成行・指値・逆指値)
- 自動売買(EA)の基本理解
継続学習能力
- 市場の変化に応じ経験から学ぶ能力
- 書籍・ニュース・専門ブログ・SNSなどで情報収集する習慣と能力
これだけの能力を身に付けるにはかなりの時間がかかります。
知識面だけでもこれだけあるので、さらに「トレード経験」から学ぶこともたくさんあります。
5年くらいかけて少しずつ学んでいった記憶があります。
そもそも学習能力が高いわけでは無いので「短期学習」は苦手です。
どっちかというと「コツコツ」時間をかけて学ぶ方が得意。
学校は「短期詰込み学習」でいきなり「テスト」なのでかなり苦手でした・・・
FXはマイペースでのんびり学んでいった感じです。
コロナ時の大相場で負けて退場しましたが、また戻ってきました。
「以前と同じような投資をしているとまた同じように退場してしまうことになる」
と思い、「AIを活用したFX投資をしよう」と思い立ちました。
「AI FX投資家」に必要なスキルについて
「FX投資」のスキルを習得した後に「AI」に関する学習を進めていく流れになりますが、「FX」の知識習得と比べると「ハードルが高い」というのも事実です。
「AI」を作れるようになるための前提知識が膨大なのと「高度な専門知識」が必要になります。
といっても現在は「ChatGPT」など自然言語学習の生成系AIがあるので、これらを活用しない手はありません。
「AI開発」に関する知識を「AI」から得るというのは理にかなっていると思います。
「聞いたこと」は答えてくれますが、「答えを理解するための前提知識」がどうしても必要になります。
「MSE?学習率?」というように、初めはよくわからないキーワードがたくさん出てきます。
「AI開発スキル」を習得するための知識体系は下記のようになります。
プログラミングの知識
「AI」は「プログラム」と呼ばれる「コンピュータが理解できる言葉」で書かれています。
「AI」の開発分野で使われているプログラム言語は「Python(パイソン)」と呼ばれる言語です。
他のプログラム言語でも開発はできますが、「AIを開発できる仕組み」が提供されている言語のため、この言語を習得することをオススメします。
FXのような時系列データ予測用の「AIプログラム」に関して学ぶ必要がある項目は
- 変数、関数、リスト、辞書、if文、for文、while文
- クラスとオブジェクト(OOPの基本)
- ファイルの読み書き(CSV、JSON)
になります。
ではどうやってこれらの知識を学んでいけばいいのかですが、
- プログラミング学習サイト
- YouTube動画
- プログラミングスクール
- 書籍
などがあります。
例えば
のような「Pythonの学習サイト」があります。
学習スタイルは人それぞれなので、自分に合った学習方法を探してみてください。
数学の基礎
「数学」と聞くと文系の方は敬遠してしまいそうですが、「AI開発」には「数学」が欠かせません。
どのような手法でAIを開発するのかにもよりますが、
- 統計
-
平均、分散、標準偏差、相関係数
- 線形代数
-
行列、ベクトル、内積
- 微分積分
-
勾配・最小化(AIの学習で使う)
などの理解が必要になります。
といっても詳細を全部理解する必要は無く、どういう内容なのかをざっくり掴んでおくだけで大丈夫です。
これらの計算は「AI開発用」のソフトウェアの中で行ってくれるので、実際にこれらを計算することはほとんどありません。
数学は、AIが「何をしているのか?」を理解するための基礎知識になります。
時系列予測データの理論
AIで未来予測を行いたい「時系列データ」について理解しておく必要があります。
例えば、「ドル円の未来の値を予測したい」となると「ドル円」のみを元に未来の値を予測しても予測精度は上がりません。
例えば、「FX」では「移動平均線」が「ゴールデンクロス」したら「ドル円」が上がりやすい。
というような理論があります。
これらの理論を知っておくと「ドル円」と「移動平均線データ(5日・25日・75日)」の値をAIに入力して予測すれば精度が上がりそうだなと考えていくことができます。
このように
- 時間の経過に沿って観測されるデータ(例:気温、株価、為替など)
- トレンド、季節性、ノイズの特徴がある
などを理解していくことで、予測精度を上げるための基礎知識が身に付いていきます。
今回は「FX」にフォーカスしていますが、「AIの未来予測」は「FX」でなくても可能です。
例えば、「金(ゴールド)」の価格も予測できますし、「株価・日経平均」なども予測可能です。
習得するまでは大変ですが、一度スキルを身に付けるとさまざまな分野で応用できるのが「AI開発スキル」です。
機械学習とAIの基本
「AI」は下記のような構造になっています。
AI(人工知能)
├── 機械学習(Machine Learning)
│ ├── 教師あり学習
│ ├── 教師なし学習
│ ├── 強化学習
│ └── ─┬─ 深層学習(Deep Learning)
│ ├── CNN(画像認識など)
│ ├── RNN(時系列予測など)
│ └── Transformer(トレンドモデル)
「機械学習(Machine Learning)」はそのまま「機械(コンピュータ)」に学習させる仕組みです。
学習させた内容を元に「予測値」を出力します。
「機械学習(Machine Learning)」の「RNN」や「Transformer」を利用した「時系列データ予測」に関する知識が必要になります。
学習内容のトピックとしては、
- 教師あり学習 / 教師なし学習
- 回帰と分類
- 損失関数、学習率、エポック、バッチなど
などがあります。
どれも奥深い学習分野ですので、少しずつ繰り返し触れながら理解をしていく必要があります。
時系列データ予測のAI技術
AIで「FX」を予測する方法にはさまざまなものがあります。
- LSTM
-
時系列に強い。長期記憶ができる
- Transformer
-
最近の最先端AI技術。PatchTSTやInformerなど
「ChatGPT(Chat Generative Pretrained Transformer)」なども有名。
- ARIMA
-
古典的手法(統計ベース)
などがあります。
LSTMは25年以上前に発表された、RNNのAI技術ですが、実績があり、現在も利用されている技術の1つです。
「Transfromer」は、新しい技術であり、これからの未来予測AIのメインストリームとなり得る手法です。
これからFXの「数値予測AI」を開発するならこのどちらかになると思います。
この2つのメリット・デメリットを比較してみると、
LSTM(Long Short-Term Memory) | Transformer(PatchTST・Informerなど含む) | |
順序の扱い | 時系列に沿って逐次的に処理(自然な順序意識) | 自己注意機構で全体を一気に見れる(順序は位置エンコーディング) |
並列処理のしやすさ | 逐次処理ゆえに遅い | 並列処理可能(高速学習・高速推論) |
長期依存の扱い | 一定レベルで扱える(通常のRNNよりはマシ) | 長期依存もAttentionで自在に扱える |
モデルの軽さ | 比較的軽量で小規模データでも学習しやすい | パラメータが多い(特に大規模モデルは重い) |
小さいデータへの適応力 | 強い(過学習しにくい) | データが少ないと過学習しやすい |
解釈性(どこを見てるか) | わかりにくい | Attentionスコアでどの情報を重視したか可視化できる |
実装のしやすさ | ライブラリ豊富、PyTorch・Kerasなどで簡単に実装可 | やや複雑(でも今は便利なライブラリが揃ってきてる) |
論文・事例の多さ | 過去に山ほど事例あり | 増えてきてるがLSTMほどではない |
SOTA達成率 | 古めの手法になってきている | 現在のSOTA(最先端)多数 |
モジュールの組み合わせやすさ | 普通 | 多入力・外部特徴など複雑構成に対応しやすい |
のようになります。
学び始めはよくわからない言葉も多いかもしれませんがAIを学ぶとこれらの言葉の意味も理解できるようになっていきます。
「AI開発スキル」の学び方
「AI開発スキル」はわかったけど、「何から学んだらいいの?」と思われる方も多いのではないかと思います。
これからより実践的に「AI開発スキル」を学んでいく手順をご説明していきたいと思います。
「AI開発」に必要なソフトウェア
普段、FXのAI開発に使用している主なソフトウェアについてお話していきたいと思います。
Anaconda Navigator
「Anaconda Navigator」は、Python環境とツールをGUIで簡単に管理できるアプリケーションです。
下記のようなさまざまな機能があります。
- 環境管理
-
Pythonバージョンやライブラリを切り替えられる仮想環境の作成・削除・切替がGUIでできる
- パッケージ管理
-
numpy, pandas, PyTorchなどのライブラリのインストール・更新・削除が簡単
- アプリケーションの起動
-
「Jupyter Notebook」などさまざまなアプリケーションを起動することができます。
- チャンネル設定
-
conda-forgeなどのパッケージ取得元(リポジトリ)をGUIで設定できる
- ターミナルの起動
-
GUIだけでなく、Anaconda Prompt(黒い画面)もここから呼び出せる
Pythonで「AI開発」をするなら「開発環境の構築」から「AIプログラムの実行」までシームレスに行えるため「Anaconda Navigator」がオススメです。
TensorFlow&Keras
Googleが開発した「機械学習・深層学習ライブラリ」でディープラーニング(深層学習)を扱うためのソフトウェアです。
「GPU」にも対応しているため、大規模な学習やモデルのAIも開発することができます。
「ドル円」や「FX関連データ」は大規模になることが多いので「GPU」対応はマストかもしれません。
現在「LSTM」の「AIモデル」も稼働していますが「TensorFlow&Keras」を利用して開発を行っています。
「TensorFlow」と「Keras」の違いは下表のようになります。
比較項目 | TensorFlow(テンソルフロー) | Keras(ケラス) |
内容 | ライブラリ(フレームワーク) | TensorFlowの高レベルAPI(補助ツール) |
役割 | 数値計算、モデルの構築・学習など全部 | モデルを直感的に組み立てるための道具 |
学習難易度 | やや難しい(細かく設定できる) | カンタン(初心者にもやさしい) |
プログラムの書き方 | やや冗長 | シンプル・見やすい |
フル機能 | あり(GPU制御、分散処理など) | 制限あり(Keras単体では学習できない) |
メンテナンス |
PyTorch
Facebook(現Meta)が開発した機械学習・ディープラーニング用のオープンソースライブラリです。
「PyTorch」も「GPU」に対応しています。
「CNN、RNN、Transformer」などを簡単に実装できるため、「ディープラーニング(深層学習)」に強いソフトウェアです。
下記のようなさまざまな処理を実行することができます。
- 画像認識(画像の識別・判断)
- 自然言語処理(文章を分類)
- 時系列予測(株価や為替の予測)
- 音声認識・生成(音声→文字など)
また、「TorchScript」という仕組みを使うことで、「PyTorch」の「C++版」である「LibTorch」でも実行することができます。
AI開発学習の実践
AI開発の基礎理論を習得したら、後はひたすら「実践から学ぶ」ことが大切です。
FXも同じで「FXの投資理論」を学んだら、「投資の実践」から「FXの投資方法」を学んでいくことになります。
AI開発も一朝一夕では身に付かず「経験」を積むことが大切な分野です。
おおまかな流れは
- 「通貨の価格」を取得する処理を作る
- 「通貨の価格」をAIで学習できる形に加工する
- AIモデルを作る
- AIに学習させる
- 学習精度を確認する
- AIで未来の「通貨ペア」の価格を予測する
のようになります。
「学習」の過程では「学習パラメータ」というものがあり、これを調整しながら「学習精度」を向上させたり、学習させる「データの種類」や「データ数」を増やして、よりよい「予測精度」が出るようにAIをチューニングしていきます。
まとめ
ここまで、
- 「FX投資家」に必要なスキルについて
- 「AI FX投資家」に必要なスキルについて
- 「AI開発スキル」の学び方
についてご説明をしていきましたが、「AI」で開発するための基礎的なスキルを身に付けるための指針になったのではないでしょうか?
「思ったより学ぶことが多い」と感じている人も多いと思います。
私自身も「日進月歩」で少しずつ学んでいきました。
「すぐに身に付く知識・スキル」は「誰でも習得できるスキル」なので、「スキルの価値」という点で言うとあまり高くありません。
「時間がかかって身に付けるのが大変」だからこそ価値があります。
自分はそういうスキル習得を目指してきたので、「AI開発ができる」というスキルと「AIを開発してFX投資に活かす」という「投資手法」を手に入れることができました。
これからも社会が「AI化」していくのは「時代の流れ」なので止めることはできないし、さらに加速していくと思っています。
「FXはAIで投資するのがスタンダードな未来」がやってくることも考えられます。
かなり先なのか近い未来なのかわかりませんが、そういう未来を予測して「AI開発スキル」を習得するのも良いのではないでしょうか。
これからも「AI開発」の過程や「投資結果」を公開していきたいと思います。